2013年11月24日日曜日

Especialista


サラマンカで日西大学学長会議(2013/11/07-08)というのがあって、行って来た。もちろん僕は学長ではない。学長のお供、鞄持ちというやつだ。いや、学長の鞄を持ったりはしなかったので、念のため。

その機会を利用して、同窓会のマドリード支部の人たちと会ったりもしたし、他にもいくつか訪れたところがあって、結構忙しかったのだが、スペイン在住の卒業生にいろいろと世話になりながら滞りなく出張を終えることができた。

さて、訪問先のひとつCSICで印象に残ったことがある。学長とは旧知の副院長のオフィスに行ったのだが、彼はただの鞄持ちである僕についての情報を事前にチェックしていたのだった。僕の名前をさらっと発音するというわけにはいかなかったが、こちらの自己紹介を待たずに僕のことを especialista en flamenco と言ったのだった。

最近スペイン語で書いた論文と言えばフラメンコ関連のものなので、これは分かる。語学の論文もスペイン語で書かなきゃな、と思ったりしたのだが、この言い方がどこまで本気だったのか、つまり僕がフラメンコ研究だけをやっていると認識されたのかどうかは分からない。いずれにせよ、これから会う人の研究分野をチェックするというのは、見習いたいなと思う。

時々、スペイン語学の専門家であるはずの僕がなぜフラメンコをやるのか、あるいはどのようにしてそのようなことが可能になるのか、尋ねられることがある。僕としては、フラメンコも語学も同じだ、ということで答えになるだろうか。フラメンコ史は言語史と同じ方法論でできる。カンテはスペイン語で歌われるから、そのテクストの研究は形容詞不要のただの文献学だ。

たとえば、世の中には記述的なスペイン語学とスペイン語教育学の両方をやっている人たちがいる。この2つは一見似たような分野だという印象を与えるが、目標も方法論もかなり違う。僕は記述屋だけれど、現場の教師としてスペイン語教育について考えていることはあり、自分なりの工夫をしたりしている。そのレベルでなら、スペイン語教育に関する文章も書いてる。しかし、スペイン語教育の研究者ではない。自分にはその準備がない。それに対して、さっきも言ったが、フラメンコの研究については今まで僕が勉強してきた範囲で対応できる。と言うか、対応できる範囲のことをやっている。つまり、研究領域という意味では、僕にとってはフラメンコよりもスペイン語教育の方が遠いのだ。